あまりに唐突な展開に 言葉を失っている
着地点がここだとは 予想だにしなかった
しかし、振り返れば
道は常に記されていた
道標に従って進んだだけ
道標を見つけるのが唯一の「私に出来ること」だった
それもまた、探すのではなく
「ただあるがままを見る」という
自然の働きに 身を委ねるしかなかったのだ
だから、結局
私は何もしなかったに等しい
これが 浮かぶということか
これが 流れるということか
いつしか、森に入ったのだな
森は 水とともに あったのだ
地球は 水の惑星であると同時に
森の惑星でもあったのだ
新しい月が 祝福のしずくを降り注ぐだろう
森も 海も 街並みも
月の光で つつまれる
祝福に満ちた月が もうすぐ昇る
2022/9/8
雨を呼ぶ カエルが 鳴く
地を洗い、潤す雨は
ちょうど
涙が 体の内部・・・
胸の奥から込み上げて 心も体をも癒すように
地の底から込み上げるのだ
つまり、天は 地の底と 繫がっている
私たちが見上げる空は、
自分たちの内部世界だったというわけだ
誰とも隔てのない、一続きの空
雨は、そんな空から降ってくる
2022/9/29
絵画に命を吹き込むのは
誰か?
平面であれ、立体であれ
そこに命の息吹を、ぬくもりを
感じているあなたは
どこにいるのか?
時の流れの中に存在するあなた
片時も静止することなく
変化し続ける あなた
いつも在る
いつも存在するあなたこそが
「空」そのもの
一見、何も無いように見えることが 大事
自分の中が 空っぽに思えることが 大事
空っぽになって、初めて
命のエナジーは
吹き込まれる
誰によって?
いつもいるあなたによって。
2022/9/8
中学生ぐらいの男の子が
「僕の背中、見て」
と、Tシャツを脱ぎながら クルリと 私に背を向けた
彼の背中には 昆虫の翅が 生えていた
うす緑色の 繊細で美しい 翅は
まだ 羽化したばかりのセミのように やわらかく 透き通っていた
「君、たしか・・・尾崎くんだよね」 と、私
「そうだよ。背中、見てくれた?」
「翅が 生えてるけど・・・」
「やっぱ、そうか・・・なんか 変な感じがしたんだ」
そんな夢を見た 翌日
ダイニングの 白い壁に
どこから やってきたのだか セミの幼虫が とまっていた
こんなところで 大丈夫だろうか?
私の心配をよそに 幼虫は 羽化を始めた
もう 木に移したりとか、ヘタに手を出せる状態ではなくなっていて
私は、その羽化の 一部始終を ただ見守ることにした
やがて あらわれた 新しいセミの体は いかにもやわらかく
極薄の ガラスか氷細工より もっと繊細で ナイーブな 翅の美しさに
私は 見とれるばかりだった
薄緑だった体が しだいに 黒味を帯びて
どこから どう見ても立派なセミになったと そう思った途端
セミは 翅を動かして 飛んだ
私は急いで 窓を開け セミを戸外に 出してやった
外は もう 夜だった
私は、そのセミを勝手に「OZAKI君」と名付けた
2016/7/28